世界一辛い「舞子さんひぃひぃ」
長野市の繁華街権堂町の西鶴賀に初見さんお断りの小料理屋さんがあります。
初見さんお断りですから店名は伏しますが、
アーケード通りの東外れ付近にありますとだけ記載します。
そこの女将さんに紹介されたのがこちら。
世界一辛いとあります。
ちょっとエロい名前とデザインが楽しかったりします。
これを知るまでは、八幡屋磯五郎のバードアイが最凶と思っていましたが、とどっちが辛いかを判定できる味覚を私はもっていません。
どちらも辛さに耐性のない人を、ほんのひと振りでしばらくは苦しめる破壊力があることは間違いありません。
バードアイのデザインは凶悪さを感じさせるので注意を喚起してくれます。
※凶という表現は辛さを表す場合、取り扱い注意を含めた意味で使用しています。万が一目にでも入ったら想像を絶する痛みを伴うでしょう。
「舞子さんひぃひぃ」は女将さんから、
曰く「辛いけど美味しいから」と勧められました。
私は辛さに人並み以上の耐性を職業上得ていましたが、
正直、美味しさは分かりませんでしたので、
「トップクラスの破壊力ですね」と返しました。
更に女将さんは、「これ再現(コピー)してみたんだけど試して」言って試作品を勧められました。
…「辛いさは同レベル。美味しさは正直分かりませんが、風味が近いと思う」
と返しましたところ「うまくできただよん」って嬉しそうにしていました。
職業上辛さの耐性があったのは、当時私は近所でラーメン屋の店長をしていて、
辛いラーメンを売りの一つとしていたからです。
当時店のスタッフにマイ「バードアイ」を持参するほどの辛党女子がいて、
彼女に極めることを唆し、開発された品をMAXとして提供していました。
辛さは順に、小辛、中辛、大辛、MAXで、
後に注文に対応するのが面倒で後悔したのは内緒です。
困ったのが辛さの程度を聞かれた時です。
あくまで主観でしかなく、相対的、数的に示すことができませんので、
MAXはココ壱の10倍よりはるかに辛いと伝えてました。
MAXは一般のお客さんには注文の際、厳重注意をしていましたが、
挑戦者はことごとく敗れ去り、
「こんな辛いものは食えるか」というお叱りや
「翌日は偉い目にあった」という苦情をいただきました。
まぁ当たり前の辛さに飽きた人に向けた品ですから当然です。
ごく少数の屈強な辛党に愛される品になり、
僅かですがこの品目当ての常連さんも来られるようになりました。
終始無言で食される女子には近づきがたいオーラを感じたものです。
真っ赤な丼に向かい、
汗ひとつかかず涼しい顔で食べられる姿は絵になります。
この品はもう一つ残念な形でウケていました。
場所柄サラリーマンのお客さんが多く、飲んだ帰りの店のポジションで、
MAXは罰ゲームに利用されていました。
悲鳴を上げる犠牲者は何人もいて気の毒でした。
一言さんお断りの小料理屋さんに話を戻します。
界隈では一人勝ちのお店で、飲み客が減る今時も無関係なファンの多いお店です。
女将さんはスレンダーで別嬪さん。
会話は気風がよく強い女性のイメージです。
料理は全て女将さん手作りで、レベルが非常に高いと思います。
私ごときですが、青年期に美味しいものを実食できた経験と、
(バブル期に食にお金を使えたのと元妻の料理上手に感謝)
ラーメンを開発するうえで味覚はかなり鍛えられたと思っています。
女将さんのお店の主な客層は、市内の高給取りが多くスーツ姿ばかりで、
奥に小上りがあり、隠れスポットでしょう。
お酒も女将さんが旨いと思うこだわりの品ぞろえです。
そして何よりうれしいのが良心的な値段設定であることです。
美味しいお酒と小料理、綺麗な女将さんとの会話は幸せになれるひと時でした。
ですが当時、私は女将さんの店に伺うのはイレギュラーな日に限りました。
お店の営業時間がこちらの方が長く、
定休日もお互い日曜祝日でした。
(ラーメン屋さんで日曜日が定休日ってかなり珍しいと思われますが、立地条件と駐車場がないことが理由でした)
故に自分の店を開けられない事情があった時にしか女将さんの店に行けませんでした。
初めて訪れた時も材料がどうしても間に合わず開店を諦め、うちの店の常連さんであった女将さんへのお礼の意味も込め伺いました。うっかり店に入った時の微妙な空気は、マスターが何故今ここにいるの?というのと初見さんお断りの店だったことを知らずに入ったためでした。そんな訳ですから通算で5回も訪れてはいません。
女将さんの店は年末年始、GW、夏季、SWは大連休で、休暇が長めサラリーマンを超えています。初見さんお断りと書きましたが、人伝手に聞いた話で本人に確認はとっていませんが、席数が少なく来るであろう常連さんのために、初見さんを断っているのは見たことがあります。下手な酔っ払いは間違いなく叩き出されますが、金曜日を除いた平日の早い時間であれば入れてくれるかもしれません。
女将さんは私の店の常連さんでした。
女将さんだけでなく、お店の方やお客さんも一緒に連れてきてくれる大変にありがたいお客さんで、私の店の常連さんの多数は女将さんからの紹介だったと思います。
味にうるさい女将さんに認められていたことは、飲食業に入って期間の短い私には自信になっていました。
辛い話に戻ります。ここからは内緒話です。
女将さんはそうです。大の辛党でMAXも余裕でした。注文はもっぱら汁なし担々麵でしたが、ある日凄いことを知りました。4人で4杯の注文だったのですが、女将さんがそのうちの3杯を平らげているのを見た時です。他のメンバーはお酒を飲んでいるだけで、普段2杯は女将さんの分と知りました。私の店のモットーの一つは、尊敬する長野市のパスタの名店のマスターの考え方を真似ていました。「量も味のうち」ということで満腹も美味しさだという考えを私も実践していました。普通の店より多めの麺量です。それを2杯普通ですから、スレンダーな女将さんからは想像できませんでした。
世の中には大食漢は存在します。私の店のオーナーもその経営者仲間も本気を出せば5杯はいける口です。正直呆れる量です。そんな食欲がラーメン店の経営に際して貪欲なよい方向性であったように思えます。ただし、ほぼ全員が糖尿病の悲しいオチが付きます。またラーメン店に関わる人で飲み過ぎがたたって肝硬変の方も多い気がします。
私の店に初めて著名なラーメン評論家が見えられた時、随分顔色が悪いなぁと思っていたら暫くして帰らぬ人になってしまいました。かくゆう私は後者です。現代医学の発展と業界を離れたことでお酒から離れることができました。お酒が大好きだった私が、ストレスを抱えまくってラーメンを作り、最悪は酔っ払いの相手もしなければならない環境です。お酒を控えることができませんでした。プロとしてお酒に対しての意識が低かったと大いに反省しています。
ずいぶん話がそれました。
書きたかったことは辛いものについてだったのですが、あらぬ方向に行ってしまい下手をすれば正体がばれてしまう内容です。少し公開にためらいを感じながらここで書き終えます。